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未然防止の部屋


SSMとは

SSM(Stress-Strength Model:ストレス-ストレングスモデル)※1※2とは、製品や工程に起こりうる故障・不具合・不安全の発生メカニズム(因果連鎖)の知識を設計・計画時のトラブル予測・未然防止に活用できるように構造的に表現するためのモデルです。 また、SSMは広義には、故障・不具合・不安全の知識構造化モデルに基づく知識ベースを運用して、トラブル未然防止を効果的に実現するための知識マネジメントの方法論を指します。
※1:SSMは、東京大学工学部において、田村泰彦(前同大学助手、現代表取締役)による不具合予測・未然防止のための設計知識の構造化研究によって考案され、自動車、自動車部品、家電、医療機器などの製造業分野における豊富な実践を通じて確立されたモデルです。
※2:SSM(ストレス-ストレングスモデル)は、一般的には、材料強度学の分野で、材料の破損モデルを指しますが、ここで述べるSSMは、その概念を知識の構造化のために応用し、知識表現モデルとして構築されたものです。
SSMでは、下図のように、トラブル発生メカニズムを、因果モジュール(原因⇒結果の分節単位)に分け、各因果モジュールを、定義属性、不具合モード、ストレス要因、ストレングス要因、制御属性要因という5つの観点を用いて表現します。
ストレス要因、ストレングス要因、制御属性要因は、総じて、不具合モード発生要因と呼ばれます。またくどい説明になることを控えるため、便宜上、ストレス、ストレングス、制御属性のように“要因”という表現を省略することがあります。
【不具合モード】
製造以降のライフサイクル上、設計・計画対象に発生する望ましくない現象、状態、特性変化
[例]
(設計計画対象における) 配管の疲労破損、滑り軸受の磨耗過大、電源回路の異常発振、センサの誤検知、軸段付き部の応力集中過大、ゴムの極低温硬化、プレートの孔食大、制御線へのノイズ重畳、基板コネクタの逆挿し、ヒータ加熱時のオーバーシュート大など

【定義属性】
不具合モードの発生メカニズムの知識を適用する対象・アイテムの範囲を定義する属性
[例]
板バネ、滑り軸受、板金曲げ部、電源回路、光電センサ、NBR、外装部品、FET、ハーネス配線、油圧制御

【ストレス要因】
定義属性の対象に製造以降のライフサイクルのなかで与えられる使用/環境/作業上の条件・異常な入力/状態・制御できないばらつき等
[例]
ユーザの繰返し使用回数大、機器の連続運転時間が長い、周辺機器からのサージ入力大、低温環境、ユーザの乱暴な取扱い、汎用ICの特性バラツキ、堆積した雪が融ける

【ストレングス要因】
不具合モード発生防止のために、定義属性の対象において設計・計画上確保しておくべき耐性の低さや狙いの不十分さ・不足
[例]
シャフト疲労強度が小さい、すべり軸受の耐摩耗性小、ボス根元部の応力集中抑制不足、筐体の防音性が低い

【制御属性要因】
ストレングス要因を作り込む具体的な設設・計画パラメータや設計・計画指示内容のまずさ
[例]
(設計・計画内容としての) 板バネ肉厚小、滑り軸受材料グレードが悪い、曲げRが小さい、××部コンデンサ容量、外装部品が××構造である、制御ロジックに○○を入れない、△△確認指示せず

SSMでは、上記5つの要素を用い、下図に示すような3つの因果メカニズムの解釈を適用して、知識を記述します。3つの因果メカニズムの解釈を以下に示します。

SSMのメカニズムのタイプ

(1)相対的因果メカニズム
定義属性の対象において、制御属性要因で作りこまれるストレングス要因の大きさと、ストレス要因の大きさの相対的な関係に基づいて、不具合モードが発生する
(2)絶対的因果メカニズム
定義属性の対象において、ストレス要因または設計計画要因(ストレングス/制御属性)いずれか片方の要因に基づいて、不具合モードが発生する
制御属性要因とストレングス要因を記載しない知識では、それ自体に設計計画上の反省点を記述しないことになります。したがって、その原因系または影響系の知識において、制御属性要因やストレングス要因などの設計・計画上の要因を表現することが重要です。
(3)断片的因果メカニズム
定義属性の対象において、わかる範囲で断片的に把握されている不具合モード発生要因によって、不具合モードが発生する
上記のようにSSM表現することによって、定義属性によって必要なレベルに一般化された属性を記載し、対策を打つべき事象を不具合モードとし、相対的・絶対的・断片的の3つのメカニズムの解釈を駆使しながら、しっかりと再利用可能な知識を表現することができます。作成させた知識は、SSM知識と呼ばれます。

故障発生メカニズムの因果連鎖を表現するためには、各因果モジュールの間の連鎖関係を表現する必要があります。SSMでは、一般的に、以下の図のように連鎖関係を成立させます。すなわち、ある因果モジュールの不具合モードを、次の因果モジュールの不具合モード発生要因として捉えます。製造以降に発生する不具合モードにおいては、次の因果モジュールではストレス要因として捉えます。
各因果モジュールを連鎖させた表現を以下に示します。

【不具合事例】
ポリアミド製のスライドカバーにおいて、環境湿度が高い条件下で吸湿膨張が生じ、外装ケースとの間で引っ掛りが起きた。
上記の事例では、2つの因果モジュールが作成されています。そのうち、「吸湿による寸法変化」の因果モジュールは、スライドカバーの知識とせず、ポリアミドに関する望ましくない現象に関する知識として整理されています。これによって、当該知識は、スライドカバーだけでなく、他の様々な部品でも、ポリアミド材料を選択したときに気をつけるべき知識として再利用することができます。(ただし本例として、スライドカバーであることを付記しています。)

また、故障発生メカニズムをSSMに基づいて知識化することによって、一見個々別々のばらばらの知識であっても、共通の故障に至る複数の異なる故障発生メカニズムを体系的にフォールツリーとして表現することができます。

例えば、以下のような2つの故障発生メカニズムが存在したとします。
上記の2つのメカニズムは、以下のように統合して、1本のツリーで知識構造化できます。
上記を踏まえると、例えば不具合事例のように一見、事例ごとにばらばらの内容であっても、SSMを用いてその故障発生メカニズムの知識の構造化を行えば、共通の故障事象を中心にして、その発生メカニズムのツリーを整理することができます。

また、このような因果連鎖関係を構築したまま、各因果モジュールに対して、関連する文書や補足する情報(対策情報、製品区分、事例区分など)をフィールド拡張して整理すれば、構造化知識を軸としたトラブルに関する知識・情報基盤を構築することができます。
上記のように知識の構造化を行い、表計算ソフト(Excel)などを用いて整理すると、各フィールドに入力されている語句を切り出して、検索キーワードのインデックスとして用いることができます。 また、SSMmasterのようなトラブル未然防止ソフトを活用すれば、更にユーザの検索ニーズに応じて、様々な検索を行うことができるため、設計プロセスにおいて、トラブル情報を活用したトラブル未然防止システムを効果的に導入することができます。

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